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2026年1月
タイムラグのない世界を実現する「半導体三次元ナノ構造」
〜光を閉じ込め自在に操る、世界で唯一の技術〜(後編)三次元フォトニック結晶はナノサイズの周期をもつ構造であることから、作ることが非常に難しいとされています。
後編では、どのようにして作られているのか、そのプロセスやポイントについて伺いました。
加えて、豊かな研究者人生を歩む上での大切な考え方についても、髙橋先生の経験談を踏まえながらわかりやすくお話しいただきました。
学生の方々にとって、参考になるヒントがたくさん見つかるのではないでしょうか。
④三次元フォトニック結晶実現の最大の難関
前編では、三次元フォトニック結晶の技術について紹介しましたが、実現する上での最大の難関は、「積み重ねる」ことにあります。

この三次元フォトニック結晶のサイズは、髪の毛の太さの100分の1程度であり、肉眼ではまともに見ることができません。
ですが、光をしっかりと閉じ込めるためには、積み重ねる際のズレがごく僅かであっても許されません。

三次元フォトニック結晶を真上から見てみましょう。

真上から見ても、綺麗な三角形に見えます。つまり、ズレることなく下から上まで綺麗に積み重ねられているということです。
とはいえ、現状では10ナノメートル程度のズレが限界です。この限界を突破して、さらに精度を高めることにも取り組んでいます。
顕微鏡を覗きながら積み重ねていくわけですが、ナノサイズであるため、まともに見えない中での作業となりますので、通常であれば至難の業と言えるでしょう。
このような厳しい条件の中、どうやって実現しているのか、それにはいくつかポイントがあります。
まずは「正確に制御できる装置」です。
この研究室には、ナノ単位で正確に位置合わせができる特殊な装置があります。

すでにあった装置に独自の改良を重ねて製作されたものですが、マウスを1 ミリメートル動かすと、装置の先端が100ナノメートル動くようになっており、非常に高い精度で正確にコントロールできるようになっています。


通常の装置では、ナノ単位で正確に制御することはできず、もっと大雑把に動いてしまい必ず大きなズレが発生します。
ただし、装置があるからといって誰でも作れるわけではありません。装置に加えて当大学で確立された独自の特殊なプロセスも必要となります。
装置と独自のプロセスが合わさることで、この三次元フォトニック結晶が完成するということです。
現在は、この三次元フォトニック結晶がどのくらいの性能を発揮できるのか、あらゆることを想定しながら実証実験を行なっている段階です。
実験を行いながら、より精度の高い三次元フォトニック結晶を目指しています。
そして、この技術の目指すところは、自動化と量産化です。
コンピューターの中には、数100億個のトランジスタが使われているわけですから、将来的には人の手ではなく自動で三次元フォトニック結晶を大量生産できる技術が必要となり、そのための研究も併せて進めている最中です。
量産できるようになれば、光でデバイスを動かすことが当たり前の世界がやってくるかもしれません。
⑤ 研究者として成長するための2つの条件
先ほど、装置と特殊プロセスによって三次元フォトニック結晶を作ることができるとお伝えしましたが、加えてあと1つ必要な要素があります。
これらを扱う研究者自身の技術です。
ナノ単位のズレしか許されないわけですから、扱う人にも技術が求められます。
顕微鏡で確認しながら、装置を動かし積み重ねていくわけですが、想像以上に難しく一朝一夕でできるものではありません。
私もこの技術を扱えるようになるまでに相当な時間を要しました。当初は、研究室にこもりっぱなしで毎日約8時間、ずっと集中しながらナノ単位のズレを調整する日々を何か月か過ごしました。

習得するプロセスは大変ですが、投げださずに実直に取り組むことができれば、習得できる技術でもあります。
実際、この研究に取り組む学生はすべて習得しており、本学の学生の実直さを感じています。
目の前のことに実直に取り組む姿勢
「目の前のことを実直に取り組む姿勢」は、これに限ったことではなく、あらゆる研究に必要とされる姿勢だと考えています。
この作業がいつ終わるのか、あらゆることが不明確ななかであっても、コツコツと目の前のことに懸命に取り組む姿勢です。
加えて重要なことは、今やっていることの全てを理解しようとする姿勢です。
私は、この大切さを大学4年に配属された研究室で痛感しました。
研究室に入ると、さまざまな作業を先輩から依頼されることになります。
そんな中である日、研究室の大切な器具を壊してしまうことがありました。
もちろん私の中ではしっかりと取り組んでいるつもりでしたが、その器具の材質や性質を理解しないまま使っていたことが原因でした。
深く落ち込んでしまう経験でしたが、これを機に「携わっていることの全てを深く理解しなくてはいけない」という意識に切り替わったのです。
作業を依頼された意図や扱っている法則や式が生まれた背景について、そのほか器具の構造や性質についてなど、あらゆる視点から自分なりに理解を深めながら取り組み始めました。
すると、良い成果を出すことにも繋がりましたし、何よりも心から研究が面白いと思えるようにもなりました。
一つのことをあらゆる角度から多面的に掘り下げる
タイパやコスパという言葉が流行っていますが、これらの言葉の中には、「いかに少ない時間で効率よくこなせるか」という考え方が含まれているような気がしています。
もちろん大切な考え方ですが、研究者において最も大切なことは、近視眼的なことにとらわれずに、目の前の一つのことを、多面的に掘り下げながら深く理解し、一生懸命に取り組む姿勢です。
その経験が肥料となり時間をかけてやがて大きな成果となって現れます。

(髙橋先生と研究室の学生)
ですから、研究室に来る学生には、今与えられたことや学業について、あらゆる角度から理解を深めながら、コツコツと取り組んでほしいと伝えています。
前編でお伝えした「色々な世界を知ること」そして「目の前のことに全力で向き合うこと」、この2つの姿勢があれば、充実した有意義な学生生活を送ることができますし、ひいては、それが豊かな人生を送ることに繋がると考えています。
研究者プロフィール


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研究者紹介ハンドブック
主な発表論文・関連特許
Circularly polarized cavity mode emission from quantum dots in a semiconductor three-dimensional chiral photonic crystal
著者名:S. Takahashi, Y. Kinuta, S. Ito, H. Onishi, K. Yamashita, J. Tatebayashi, S. Iwamoto, Y. Arakawa
掲載誌名:Applied Physics Letters 126(8)
出版年月:2025年2月24日Wilson loop and topological properties in a three-dimensional woodpile photonic crystal
著者名:Huyen Thanh Phan, Shun Takahashi, Satoshi Iwamoto, Katsunori Wakabayashi
掲載誌名:Physical Review B 110(23)
出版年月:2024年12月27日Microwave hinge states in a simple cubic lattice photonic crystal insulator
著者名:Shun Takahashi, Yuya Ashida, Huyen Thanh Phan, Kenichi Yamashita, Tetsuya Ueda, Katsunori Wakabayashi, Satoshi Iwamoto
掲載誌名:Physical Review B 109(12)
出版年月:2024年3月12日Microstructured Organic Cavities with High‐Reflective Flat Reflectors Fabricated by Using a Nanoimprint‐Bonding Process
著者名:Takuya Enna, Yuji Adachi, Tsukasa Hirao, Shun Takahashi, Yohei Yamamoto, Kenichi Yamashita
掲載誌名:Advanced Optical Materials 12(15) 2302956-2302956
出版年月:2024年2月9日Polarization superposition of room-temperature polariton condensation
著者名:Yuta Moriyama, Takaya Inukai, Tsukasa Hirao, Yusuke Ueda, Shun Takahashi, Kenichi Yamashita
掲載誌名:Communications Materials 4(1)
出版年月:2023年12月20日- 産学連携や研究支援に興味がある方(産学公連携推進センターHP)
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