■研究の概要
鋳造や溶接、積層造形などの金属が凝固するプロセスを経る製品の品質は、製造時に形成される凝固組織によって決定されます。そのため、それらの製品の品質向上には高精度な凝固組織予測が不可欠です。典型的な凝固組織形態であるデンドライト(樹枝状結晶)の成長を高精度に予測可能な数値計算手法としてフェーズフィールド(PF)法が発展しています。PF法を用いてデンドライト成長の定量的評価を行うためには、固液界面近傍の計算格子にデンドライトの先端曲率半径の0.1~0.2倍程度の格子幅を用いる必要があり、多数の3次元デンドライト結晶が相互作用しながら成長するようなシミュレーションの実施にはスーパーコンピュータを用いた大規模計算が必須でした。
本研究では、並列演算性能の高いGraphicprocessingunit(GPU)を用いたPF凝固計算にブロック構造解適合格子を適用し、固液界面近傍にのみ細かい数値格子を割り当てることで、計算コストの削減に成功しました。また、複数のGPUを用いた並列化により、GPU一枚あたりのメモリサイズに制約されずに計算規模を拡張できるようになりました。