▼詳細
■研究の概要
■背景
タンパク質の固定化技術は、固定化酵素、イムノアッセイ、クロマトグラフィ、DDS等、バイオプロセスならびに医療分野を中心に広く利用されています。特に、プラスチック基板表面へのタンパク質の固定化技術はタンパク質固定化チップ(ProteinChip)等の構築において極めて重要であり、基板表面への高集積化ならびに配向制御法の開発が強く要求されています。
■目的
従来、用いられてきた物理吸着法や共有結合法によるタンパク質の固定化は、密度、生理活性、配向性の3者を高く維持することが困難です。本研究では、機能性タンパク質のプラスチック基板上への配向固定を目的とし、当該タンパク質の末端部に「のりしろ」となるペプチドタグのスクリーニングを行っています。基板表面に特異的かつ高親和的に相互作用するペプチドタグがスクリーニングできれば、任意の機能性タンパク質を高密度・高活性・高配向に固定化することが可能となります。
■内容
本研究では、近年、バイオチップへの利用が検討されつつある2種類のプラスチック基板(ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA))に対するアフィニティペプチドタグのスクリーニングを実施しました。右図に示すごとく、大腸菌タンパク質群を一次ライブラリとし、二次元電気泳動ならびにPMF法によってプラスチック基板に対して高親和的に作用するタンパク質を単離・同定・クローニングしました。さらに、これらを大腸菌によって高発現し、これらをトリプシンまたはキモトリプシンによってペプチド断片に分解しました。プロテアーゼ消化産物中からPC、PMMAそれぞれに高親和的に作用するペプチドタグ候補をHPLCによって分画し、MALD-TOFMSによって分子量を同定、さらに親和性タンパク質のアミノ酸配列と親和性ペプチド候補の分子量を基に親和性ペプチドのアミノ酸配列を決定しました。これらのペプチドタグはPC、PMMA基板上に対して強い親和力を有し、タンパク質固定化用のペプチドタグとしての有用性が示されました。