▼詳細
■研究の概要
■背景
〇核酸医薬品
遺伝子の突然変異が原因でおこるがんや、ある種の重篤な疾患の原因である遺伝子の活性を、分子レベルで制御する方法が、注目されています。とくにsiRNAが発見されて以降、世界中の製薬会社やベンチャー企業が核酸医薬品の開発に力を入れています。我々の研究グループでも、これまでに特定の遺伝子の発現を特異的に、高効率に制御することのできる分子を報告しています。
■目的
〇有機化学反応と核酸医薬の融合
細胞中で特定のmRNAと、配列選択的に共有結合を形成することのできる核酸医薬品の開発を行います。また、開発した核酸医薬品を用いることにより、mRNAがコードする特定タンパク質の発現の制御を行います。
■内容
〇核酸そのものの反応性を利用した戦略
細胞内に存在するDNAやRNAは、(比較的安定な分子であるものの)様々な反応性置換基を有しているため、特有の反応性を示します。そこで、生体条件下で起きる核酸塩基の反応を利用した分子プローブの開発を行いました。
〇2+2光環化反応の利用
光反応性核酸塩基(Psoralennucleoside)を合成し、DNA中のチミジン塩基と選択的に反応するプローブの開発に成功しました。
A.Kobori;K.Takaya;M.Higuchi;A.Yamayoshi;A.Murakami.
SynthesisandPhoto-inducedCross-linkingReactionsof4,5',8-Trimethylpsoralen-incorporatedOligodeoxyribonucleotide.ChemistryLetters,2009,38,272-273.
〇核酸塩基のアミノ基選択的反応の利用
シトシンやアデニンが正面に存在するときだけ反応する光感受性アンチセンス核酸を開発し、遺伝子の発現制御に応用します。)
■応用
〇標的たんぱくの発現制御
mRNAの発現を時空間的に制御することにより、様々なタンパク質の発現制御を行います。
■将来展望
〇次世代のがん治療法の開発
光感受性の抗がん剤を開発することにより、正常細胞には影響を及ぼさず、光照射をしたがん細胞のみに効果を現す次世代のがん治療薬の開発を目指します。