■研究の概要
自発的に運動する個体が多数集まり、それぞれが局所的な相互作用をすることで、全体として調和の取れた秩序が現れることがあります。ムクドリやイワシの成す群れがこの好例であり、古くから人はその協調した動きの美しさと不思議さに関心を寄せてきました。そして、高解像度の観察技術により、これまで肉眼では捉えられなかった微小な世界においても同様の動的秩序が見られることがわかってきました。中でもマイクロメートルスケールでは、細胞集団が衝突や接着、また走化性を介した相互作用によって、集団運動やパターン形成を示すことが明らかにされています。これらの秩序形成は、生物物理学の立場からの学術的な興味だけでなく、特に外部制御が困難な微小環境における群ロボットの設計という工学的な観点からも注目されています。このような背景のもと我々は、モデル生物として知られる、細胞性粘菌の集団が示す動的秩序形成の原理解明に取り組んでいます。特に最近では、走化性を示さない変異株、KI-5株に着目した研究を展開しています。