■研究の概要
ドラッグデリバリーのキャリア開発で重要となるのは、1.目的の薬剤を封入し、2.目的の場所に届け、3.目的のタイミングで薬剤を放出するという点になります。本技術は、キャリアであるリン脂質小胞に対して、簡単・簡便な方法でイオン性薬剤を封入します。リン脂質小胞としては、nm サイズのリポソームやμm サイズのジャイアントベシクルのような人工リン脂質小胞だけでなく、細胞由来のエクソソームやリソソームにも応用できると考えられます。ターゲットとなるカチオン性薬剤に対して、過剰の疎水性アニオンをリン脂質小胞の外部水相に添加すると、カチオン性薬剤がリン脂質小胞の内部水相に取り込まれ、外部水相よりも高い濃度で濃縮されます。カチオン性薬物と疎水性アニオンが、一旦脂質膜の疎水部に取り込まれたのち、小胞の内部水相に移動しますが、小胞内部の電気的中性を保とうとするために、カチオン性薬物が疎水性アニオンに引きずられる形で取り込まれるからです。外部水相の疎水性アニオンを除去すれば、内部水相からカチオン性薬剤が放出されます。