▼詳細
■研究の概要
液体、固体のいわゆる凝縮相にある物質は必ず表面を持ちます。それらの物質相は、分子間の相互作用で結びつきあっているため、表面積を拡大させようとすると外部から仕事(エネルギー)を加える必要があります。これが表面張力の起源となります。表面張力は、ギブズエネルギーの表面積に関する微分係数で表される熱力学量ですが、液体の表面張力については古くから多くの測定方法が用いられてきました。しかし、液体表面を固体により引っ張って面積を拡大する力を測定する、あるいは標準物質を使った相対測定が一般的であり、エマルジョン、高分子溶液などの複雑な物質系については使用する固体表面への吸着により正確な表面張力の値を得ることは困難です。本研究では、ガラス細管に空気圧を加え、先端に作った泡(メニスカス)を凹レンズとして用い、細管に通したレーザー光の屈折の程度を外部光学系により測定し、メニスカスの曲率半径と印加した空気圧から表面張力の絶対測定をする方法(光学的泡圧法)を開発しました。
〇光学的泡圧法による表面張力測定の原理
試料に挿入した細管先端に空気圧Pを与えると、曲率半径Rのメニスカスが生じ、Rと空気圧から静水圧Psを引いた値、表面張力γとの間でYoung-Laplaceの式が成り立ちます。開発した装置では、外部レンズがピンホールに焦点を結ぶと光検出器の出力電圧が最大になり、それらの距離L₁、L₂、外部レンズの焦点距離f、試料の屈折率nからRを決定でき、Young-Laplaceの式を用いて表面張力を決定できます。