■研究の概要
マイクロ熱流体デバイスや半導体デバイス等では、マイクロ・ナノスケールの微細構造と現象を設計・製作・制御することが求められますが、それを実現するためにはデバイスの発熱・伝熱の2次元・3次元非定常特性を評価することが重要です。本研究ではサーモリフレクタンスイメージング(Thermoreflectanceimaging:TRI)法を用いて固体のマイクロ・ナノ構造体の表面温度分布を測定し、その熱および電気特性の評価を行っています。TRI法は、物質の反射率が温度に依存することを利用した2次元表面温度計測法です。これまでサーモリフレクタンス現象を利用した温度計測は、主に点計測に基づいた材料の熱物性計測技術として用いられてきました。これに対してTRI法はカメラを用いて物質の反射光強度の2次元分布を獲得します。多くの物質では温度に対する反射率の変化率は10-4~10-5と微小です。TRI法では画像平均化や画像処理によりSN比を上げます。このため測定試料の平面位置制御と焦点合わせの精度が重要ですが、本研究では数nmの精度で位置制御を行っています。測定の時間と空間の分解能は、それぞれ照射光のパルス幅と波長に依存し、本装置ではおよそ数100nsと数400nmです。TRI法は赤外線サーモグラフィカメラに対して空間・時間分解能は高く、ラマン分光法と比較すると瞬時の2次元分布が得られる強みを持ちます。