■研究の概要
人工細胞膜モデルであるリポソームは、タンパク質等重要な生体分子と相互作用することが知られており、この相互作用の発現を利用して、対象となる生体分子の検知・識別や、その生体分子の状態を知ることが出来ると考えられています。リポソームは相互作用により膜攪乱が生じ、リポソーム内包物質の漏洩が起こります。リポソームに電解質を封入し、膜攪乱による電解質の漏出による漏れ電流を測定することで、リポソームと生体分子との相互作用を検知することができます(図1)。また、インピーダンス測定により相互作用の検知の可能性を模索しました。
本研究では、表面バルクMEMSプロセスによるSiウェハを用いた漏れ電流センサの作製を行いました。相互作用に伴う電解質の漏出を微量かつ簡易に測定することが現在マイクロアレイ化の観点で望まれており、今回作製したセンサは14mm角のSi基板に液溜め用のキャビティを設け、スパッタリングによってPt電極を製膜したものです。測定体積は数Lであり、従来の電気化学的測定とは異なり、微量液滴による測定が可能となりました。
最終的に、漏れ電流マイクロアレイセンサを作製、数Lの微量液滴による測定を可能とし、漏れ電流測定では滴下タンパク質濃度に依存したリポソーム内包導電分子による漏れ電流を測定できました。さらに溶液体積とタンパク質変性剤GuHCl濃度依存の漏れ電流を評価しました。これによりリポソーム-タンパク質間相互作用強度を定量的に評価できる可能性が示唆されました。インピーダンス測定では相互作用の有無により特に高周波(1MHz)領域でインピーダンスに相異が生じ、同相互作用によるリポソームの状態・形状変化により溶液インピーダンスが変化することが示唆されました。