■研究の概要
ヒトの身体は一見左右対称に見えますが、四肢では利き手や利き足のように、機能的な非対称性が存在しています。この左右対となる器官の一側が、他側より優れている現象は一側優位性と定義され、偏好性として捉えられてきました。若年成人における握力は利き手が非利き手と比べておよそ10%高値を示すこと、一方で歩行や走行など左右を交互に使用することが多い下肢の筋力では利き脚と非利き脚の筋力値には有意な差は存在しないことが示されていました。
対して、高齢者では、片側性病変の既往、また日常の様々な動作において身体の一側を他側より優先的に繰り返し用いることで、四肢の筋力に左右差が生じるとされています。このような身体機能上の左右対称性の欠如は、「非対称性」といった側性をもたない概念として示され、虚弱高齢者や下肢の整形外科疾患を有する者ほど高い値として検出されます。そこで、地域に在住する高齢者の上下肢の様々な筋力の非対称性の特徴について分析するとともに、歩行時に生じる身体動揺性を計測して筋力の非対称性が歩行の安定性にもたらす影響を検討しました。